アメリカ、家族のいる風景
■基本的に映画は監督のものだと思っているので、たいがい「誰が作ったか?」で選ぶ。好きな俳優もいないことはないが、やっぱり生かすも殺すも監督しだいなので出演者には特にこだわらない。というわけで、好きな監督のひとりであるヴィム・ヴェンダースの「アメリカ、家族のいる風景」を観る(原題は「Don't Come Knocking」) 。この邦題はちょっと「まんま」すぎやしないかと・・。■きちんと空を見上げ、周囲の音に耳を澄まし、砂やアルコールの匂いまでが伝わってくるような、世界を五感で捉えるヴェンダースの映像。なんだか渋いのかダメダメなのかわからないサム・シェパード演じる主人公ハワードの存在感。脇をかためるジェシカ・ラングはじめ、女優陣もさすがの人選。「パリ・テキサス」の主人公トラヴィスのような、外見まで貧相なダメダメさがない分、本作の主人公の方が少しリアリティに欠ける感じもするが、それは「映画俳優」という設定上、必要なことだったのだろう。自分をとりまく虚構の世界から抜け出そうと悪あがきする男が、外の世界と「つながっていた」ことを認識して再生していく話。でも、もしも外の世界にどっぷりつかっていたら、虚構の世界に逃げ出したいと思ったりもするのが人間。結局は「自分の人生から逃げ出さないこと」がテーマだったりする。だからこそ主人公の高齢母がひとり身奇麗に暮らす姿が頼もしい(この作品に出てくる女は皆強いんだけどね)。■今年はじめに読んだリリー・フランキー著「東京タワー」しかり。家族のいる風景は千差万別なようでいて、実は根っこは皆おなじ。だから説得力があるし、逃げたくても逃げ出せないことに「共感」を感じるのだと思う(かくいう私もそのひとり)。■追記。予告編で涙ボロボロになった「イノセント・ボイス」。こちらは残念ながら本日で上映終了だったけれど、ここに出てくる「家族のいる風景」も見逃せない。いや、見逃しちゃいけないと思った。
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