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2006年11月30日 (木)

世界の調律

世界の調律 サウンドスケープとはなにか    世界の調律―サウンドスケープとはなにか■10年くらい前に「Peace and Quiet」という言葉がふと頭に浮かんでから、いつしかそれが私の大事な創作(人生)テーマとなってしまいました。ちょうどサリン事件や阪神・淡路大震災などをはじめ、個人的にも「生きる」ということを根底から見つめなおさなければいけないような出来事が重なっていた頃です。本当に偶然浮かんだ言葉なので、当時の私が心から切望していた状況だったのかもしれません。■ですから、この本「世界の調律 サウンドスケープとはなにか」(R.マリー・シェーファー著 平凡社刊)を世紀末の頃に偶然手にして、その中に「世界中のあらゆる言語でいわれる「平和と静寂」という言葉」という一文を発見したときは、なにか運命的なものを感じました。
■この本は一見、音響学者の書いた小難しい本のように見えますが、マリー氏が作曲家(アーティスト)の視点、もっと言えば聴覚から人間の歴史や世界の秩序を捉えなおした、とても面白い本なのです。音楽家はもちろん、普段とは違う視点で物事を考えてみる面白さはどなたにでも、むしろ聴覚を特別に意識したことのない方にこそ読んでいただきたい本だと思います。普段とは違う切り口で世界を眺めてみるという点では、先日ご紹介した「グレープフルーツ・ジュース」と共通する本ですね。
■たとえば地球上で一番大きな音は何なのか?鉄の誕生は人間の生活(音環境)をどう変えていったのか?不思議な力をもった音とはどういうものなのか?音から考える現代の地球環境はとても興味深く、また問題点もくっきりと聴こえて、見えてきます。
■なぜ今この本をご紹介しようと思ったかといえば、近頃文庫本(写真左)が出たのを発見したからです。実はこの単行本は厚さが3センチくらいあって、かなり気合を入れた状態じゃないと持ち歩けないんです。あとお値段も決して安いとはいえない・・でも、一生モノであることも間違いない。でも、まさかまさか文庫になるとは夢にも思っていなかった!というわけで、この機会にひとりでも多くの方に読んで頂きたいと思います。

■この記事から5年後の2011年、東日本大震災、原発事故と自分の内の意識が外につながる体験を通じ、私は弘前大学今田匡彦研究室に2013年春まで籍を置き「サウンドスケープ」の研究に没頭することになります。「人生を変えた一冊」となりました。

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