忘れられない舞台
■30代は出産休暇があったものの8年近く劇場にいたので、結果的に世界中の舞台を観る機会に恵まれた。その中でも特に忘れられないのが数年前に観た「漫才」の舞台。もともと大阪では必ず「よしもと」に出向くお笑いライブ好きなのだけど、あの日のステージも印象的だった。東京のベテラン漫才コンビ。■スタンドマイクが1本、凛とステージに設置されている。そのシンプルな舞台と同じピリっと張り詰めた空気を従えて、その二人は開演10分前にやってきた。小柄な体に地味なスーツ。手にはセールスマンのようなアタッシュケース。そしてニコリともしないで舞台袖のスタッフに静かに挨拶をすませて、さっと舞台へ上がる。そこからはもう、別人&ハイテンション。思わず呆気にとられるくらい、思いきりバカ。半ば力技に見えるナンセンスな掛け合いも計算されたものなのだ(と思う)。■年齢と経験を積み重ねた漫才師には一種独特の凄みがある。ふたりが舞台に登場した瞬間、お客さんはそのオーラに包まれて、まるで魔法がかけられたように笑ってしまう。20分間のステージはあっという間に終わった。■そして舞台から袖にはけてくる二人。「お疲れ様でした」と、たった今までのハイテンションボイスとは全く違う、礼儀正しい挨拶が交わされた後、スーツケースを持ってあっという間に次の舞台へと消えていった。ステージに残されたのはマイク1本。客席は笑いの余韻に包まれている。■漫才師とピアニスト。マイクとピアノ。両者が向き合う孤独の種類はきっと同じだと思う。忘れられないステージのひとつ。感想はただ一言「カッコイイ!」。
■彼らの名は 昭和のいる・こいる
| 固定リンク


最近のコメント