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2007年7月18日 (水)

殯の森(もがりのもり)

Photo_66 ■この映画を見る前にちょうど、父からメールが来た。「兄の三十三回忌に合わせて父の三十三回忌も一緒に行い、これは仏教では弔い上げと言い、法事は全て済んだことになる由。今回の帰省は台風あり地震ありで心配かけたと思うが、それぞれが一生の思い出に残る事にはなるとおもいます」。■この日はちょうど松本ライブが台風で延期になった日。おりしもその時、父と母は42歳という若さで無くなった叔父(父の兄)と、祖父の33回忌を同じ信州で行っていた。いつもは私の音楽活動には渋い顔をしている父が、今回信州でライブをやることを、実は密かに嬉しく思ってくれていたようだ。父は10代で東京に出てきてしまったし、いつもは信州とは距離を置いて生活しているように見えるけれど、やはり故郷とは切っても切れない何かを感じる場所なのだろう。東京郊外の新興住宅地で育った私にとって、自然豊かな故郷を持つ人が本当に羨ましいと思う。おまけに来年の信州では、祖母(父の母)の100歳の誕生日が控えている!

■前置きが長くなったが、この映画はまさに愛する人の33回忌を迎えた認知症老人と、愛する子供を喪った若い女性が「生きていることの実感」を通して、生と死の境界線を越えていく話である。今年のカンヌ映画祭グランプリ受賞作品。■奈良の美しい田園風景、仏教の死生観など、海外にアピールする要素は勿論ある。けれども後半の森を彷徨う男女の姿には国境も人種も、ましてや性差もない。人間という姿をした命の塊が、何を求め、何を目指し、そして何を手に入れるのか。最後まで途切れない静かな迫力に目が離せない。あのリアルな森を撮れるのは、河瀬直美監督がそこで育った人だからなのだろうと思う。もちろん認知症の高齢者と密接に関わった経験が無ければ絶対撮れない映画でもある。■それにしても、古民家を改装した高齢者施設「ほととぎす」は自然に囲まれた居心地のよさそうな空間だった。先月コンサートでお邪魔した施設しかり。終の棲家には設備の新しさよりも大切なものがあるように思う。

■しかし、この素晴らしい作品が、東京ではロビーもない小さな映画館での単館上映であることが残念でならない。学校上映でもよいから、特にいま生きてる実感が持てない10代の若者に観てもらいたいな。その内容にきっと戸惑うだろうけれど。一生忘れられない映画になることは間違いないから。

■作品公式ページ⇒

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