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2007年11月28日 (水)

ピアニストなら だれでも知っておきたい「からだ」のこと

ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと Book ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと

著者:トーマス マーク; トム マイルズ; ロバータ ゲイリー
販売元:春秋社
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■先月の誕生日にクロマニヨンに貰った本。生涯現役を目指すので、40代は演奏スタイルも「持久力」を重視して折り返す地点なのかな・・・これは解剖学的なアプローチで、ありそうで無かったピアノ本(ではある)。■演奏はもちろん、「弾く姿」も印象的だったピアニストで真っ先に思い浮かぶのはグレン・グールド。でも、彼が故障に悩まされていた事実はこの本を読むまで知らなかった(おまけに50歳で死んじゃったし)。「ピアノを沢山弾けば、筋肉が疲れたり、どこかが故障するもの」と思っているピアニストは多い。けれどもそれは大間違いで、ピアニストにはピアニストなりの正しい筋肉の使い方があり、からだの仕組みに「気づく」ことが大切だと本書は語る。音楽に集中するのではなく、体に注意を払うことができている状態こそ、演奏者にとって最良の心理状態なのだと。■これは最近、実は私も思っていたこと。演奏家が音楽に没頭している演奏は、特にライブの場合、実は聴き手に「音楽が届いていない」ことが多いのだと(今さら遅い^^;)。無我夢中ではなく、無私で演奏すること。それこそが大切なのだと。

■ピアノは、感情や想いだけでは弾ききれない。小さい頃からの持続した(しかも長時間の)訓練を必用とするし、そのわりには弾けても珍しくないし(日本の場合)、なんとなく「割が合わない」楽器だと思う。しかも一台づつ鍵盤や響きの状態が違うから、瞬時にピアノの性格を見抜いて、その楽器ならではの「最良の音」を出していく臨機応変さ(テクニック)も要求される。メカニズムはなんとも西洋的。この著者がカイロプラクティックでもヨガでも、自分の故障を解決できなかったというのはうなづける。つまりは、そういう西洋人が作った楽器なのである。(たぶんヨガでも、カイロプラクティックでも、自分の体(呼吸)に気づく手段を持てば解決できる問題は多いはず、と東洋人の私は思うから。)

■どちらにしても「心と体(と頭)をぜーんぶ使って、ピアノに取り組みなさい」という本なのだと解釈している。メンタル面が体に影響を及ぼすことも多いので(緊張による力みとか)、そっちから故障を解決していく方法ももちろんあるとは思うけど。体に注意を払いながら弾くことで、余計なことを考えずに精神をニュートラルに保てるという視点は、音楽の世界では(スポーツみたいで)新しいのかもしれない。■ヨガや気功では息を吐きながら力を出す。息を止めるのではなく、余計な力を抜いた時に、いちばん力が出るのよね。演奏に限らず、人生すべてがそうなのかもしれないけど。

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