ダージリン急行
■どういう訳か10代の頃はサマセット・モームの小説が好きで、将来はラッフルズホテルみたいなところで、のんびりカクテルでも飲みながら優雅な生活を送りたいと思ってました(まったく叶わず ^^;)。そしてモンスーン地域のスコールの存在を知って、なんともスカッとした、あとくされの無い雨の降り方がとてもいいなと。日本にもスコールが降ればいいのにと思っていたら、いつの間にか東京はそうなっている。このところ続くスコールを越えたゲリラ雷雨は困りものだけど。そのうちスコールも生活の一部になっていくのかな。朝からベランダの洗濯物を出したり入れたり・・・まだ空を読めるところまで達していない。。
■映画は圧倒的にロードムービー派。’移動’という時間の流れと、どこかざっくりとした作品の空気感が好き。■インドはまだ行ったことがない。でも子供の頃のあだ名が’インド人’だったり、インド綿(カディ)を触ると妙に心が落ち着いたり、インド音楽や舞踊には全く違和感がないので、前世どこかで一度はインド人だったのかもしれない。カレーも大好き。粉をこねて朝からナンを焼いたりしてる。ヨガも自然に生活の一部になってる(考えたら母も30年くらい前にヨガをやっていた)。ピアノの前には等々力さんのインド土産サラスヴァティが鎮座している。彼女こそBEN-TEN Recordsの弁天様(そしてここは弁天町)。■このあたりは近くにインド大使館があったり、地下鉄沿線上にIT産業地帯があったりするせいか、ターバンを巻いた背広姿の人や、きれいなサリーを着たお母さんや子供も普通に見かける。最近はインド料理屋もめっきり増えて、いつでも本場のカレーが食べられるから嬉しい。
■前置きが長くなったけど、この映画「ダージリン急行」は、アメリカ人のダメダメ&ボンボン三兄弟が「インド心の旅」に出る話。列車内は車両を借りきっての撮影らしいけれど、タイルや照明など異国情緒あふれる美術がなんともいい雰囲気。■旅はやっぱり、ゆっくり寝台列車がいい。町から町へ移動するのに何日もかかったり、恋が生まれたり・・移動する時間そのものが非日常から日常になっていく感覚が好き。ゆったりと流れる窓の景色も美しい。
■そういえば、学生時代にウィーンから乗った寝台列車で、フランスに留学中の北朝鮮の女の子と同室になったことがあった。個人と個人で出会えば、同じ世代の人間同士(しかもアジア人同士)すぐに打ち解けることが出来たけど、そんなことも向かい合わせの客室だからこそ。彼女はあれからどんな人生を辿ったのだろう・・・。
■また話が脱線しました。この映画で私がいちばん好きなのは、ある’出来事’をきっかけにダメダメ三兄弟が辿り着いた砂漠の中の農村風景。白いカディを身にまとった農民たちの、質素で素朴な、人の生き死を自然に受け入れる姿と、その魂の清らかさに心打たれます。その場面から一気に、この映画は本物の「心の旅」へと変わっていく。だからと言っておしつけがましい感じは全くなくて、のんびり列車に揺られながら観ているような感覚の、憎めない作品。あ、基本的にはコメディです。
■写真は我が家のカディ。マハトマ・ガンジーが独立運動の象徴として農村に広めた「手紡ぎ・手織り」の布。でも歴史は古く3000年前にはその存在が確認されているようです。すべて手仕事ならではの、ふぞろいな糸の縒りや織り。完全無欠な機械織り布と違って、一枚として同じ布が無いところに作り手の存在を感じて、とても愛着がわきます。手触りもとにかく感動的に優しい。そして何より丈夫!うちはバスタオルや肌がけ、直接肌に触れるものはみんなカディ。娘もお風呂上りに身体に巻きつけてあげると、ほっとした顔してます。
・・・・・・・・・・・・・・(C)2008 Yuko Sasama・・・・・・・
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