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2008年12月の2件の投稿

2008年12月13日 (土)

未来を写した子どもたち BORN INTO BROTHELS

080827_miraikodomo_main_2■今回も、’生’について考えさせられる秀逸ドキュメンタリーのご紹介です。

■「未来を写した子供たち」はインド・カルカッタ(コルカタ)の売春窟に生まれ育った子ども達と、そこに入り込み彼らに写真を教えることで、子ども達の未来を切り開こうとする女性カメラマン/ザナ・ブリスキの奮闘の記録です。

■想像を絶する劣悪な家庭環境の中で、驚くほどの才能と知性で未来をつかみ取る少年。せっかくのチャンスを親の意志、または自分の意志で諦める少女・・・。そこにはインドの闇社会の断片が映し出されています。が、結局のところ人は、たとえどんなに悲惨な環境に育ったとしても、最後は自分の意志が全てを決めていくのかもしれないと。少し突き放した言い方ですが、カメラを手に生き生きと活動する子ども達の姿から「生きること」の基本を見たような気がします。そして救われた子どもが輝いてみえるだけに、救われなかった子どもの悲劇が浮き彫りになるという厳しい現実も。とにかく、とても一言では言い尽くせない、興奮に近い感情を覚えたドキュメンタリーでした。■本当は子供たちにも見てもらいたい映画ですが、’売春’の問題やインドという国を理解できないうちは難しいかもしれません。第77回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞していますが、日本での公開までには長い時間がかかりました。ずっしりと重いテーマですが、悲惨な印象ではありません。文部科学賞特別選定作品、とういことですから12歳以上は大丈夫でしょう。

■実はこの数ヶ月、インドについて色々な書物を読んでいました。音楽、風土、宗教・・・。知れば知るほど、わからなくなるのがインドです。この映画の中にも、代々続く売春婦の家庭が、カーストでは上にあり裕福な暮らしをしていたりします。私達が考える赤線地帯とは根本的に感覚の違いがあるのです。そのあたりの背景を、映画でも少し説明してくれたら、また違った印象になった気はします。■だからと言って、最初から自分の境遇を’これでいい’と思っている子供はいない。いずれ逆らえない現実を知り、諦めて受け入れていくだけなのです。ここから抜け出すには教育しかないと、写真の指導者ザナは語ります。もちろんそれは正論だし、私もそう思います。けれども同時に、せっかく入れた学校を家庭の事情で去った少女が、学校以外にも生きる道を探し、どうか’絶望’しないで欲しいと祈るばかりでした。

■余談ですが、先日のムンバイのテロやオリッサの宗教対立の背景に、インド資本主義の発展があるのだとしたら、大学進学だけが子どもたちを救う手段なのだという西洋的な正論も、一歩間違えば両刃の剣になる可能性もあると思いました。「この学校に入れば大学まで行けます。医者にも弁護士にもエンジニアにもなれます」という教育者の言葉に、「ああ、これでこの子は救われた」と心から安堵した自分に、ちょっと待てよ?と問いかける自分もいました。本当の幸福は、動物園や海で見せた子どもたちの笑顔の中にある。きらきら輝く目と、自由な心を失わないことですから。■ただ、どんな家庭事情の子供にも、勉強したいのならば門戸を開く進学校がある。こういうところは、今の日本の’お受験’システムよりも、よほど健全かもしれません・・・。そういえば世界最高齢70歳で出産したインド女性は「周囲には親戚が沢山いるから子育てには問題ない」と語っていました。うーん、インドは本当に’人間力’が強い。

■映画の中で売春婦の母を殺され、失意の中からも未来をつかみとった11歳の少年は今19歳となり、ニューヨーク大学で映画の勉強をしているということです。本当に才能のある少年でしたから、なんとも嬉しい後日談でした。ザナが救い出した一人の少年が将来インドを変えるかもしれない。この映画の本当のテーマはインドに限らず、「子供は未来だ」ということなのです。

■銀座での上映は26日まで。ロビーでは子供たちの作品も展示されています。どうかひとりでも多くの方に観て頂きたい!

未来を写した子どもたち BORN INTO BROTHELS 公式サイト→

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2008年12月11日 (木)

ヤング@ハート

Photo_2■最近、音楽仲間とよく話題になるのが「いつまでやるか」ということ。舞台で醜態をさらける前に辞めるという人も、肉体の限界までという人も・・・それぞれに美学があり、どちらが正しいということはありません。そういう私は、限界に挑戦型かなあ・・coldsweats01。一応、音楽活動のピークを80歳くらいに想定しているので、今はまだ修業の途中と思っています。が、指の関節曲がるのか?とか。ペダルに足が届く?曲は作れる?とか。ちょうど人生の折り返し地点の今日この頃、ピアノを弾きながらイメージする将来像は、なかなかファンキーですcoldsweats01

■この映画「ヤング@ハート」は、アメリカに実在する平均年齢80歳のロックンロール集団のドキュメンタリー。こんな音楽映画は、まず観た記憶がありません。人生最期まで性、いや生を謳歌し、本番を前に力尽きて死んでいくメンバーさえいる。その凄まじい生き様は、まさにロックンロール。いや、パンクでしょうか。■プログラムに難しい新曲を取り入れ、挑戦することを忘れない。普段はクラシックを聴いている人も、ここではロックを受け入れ、楽しんでいる。病気さえ笑い飛ばす。淡々と、でも熱い。決して自己満足では終わらない、舞台に向かう彼らの「プロ根性」に脱帽です。■指導者ボブ・シルマン(53歳)の姿勢も素晴らしい。厳しくも優しい、メンバーとの絶妙な距離感。この活動を始めた28歳当初はおそらく、こんなにも人の死と向き合うことになるとは思わなかったでしょう。それでも続けてこれたのは、何よりも音楽を愛し、メンバーと真摯に向き合い、その後迎える彼らの死に敬意を払っているから。まるで修行僧です。誰にでも真似できることではありません。メンバーは彼の厳しさをボヤきながらも、「負けてたまるか」と諦めずに、厚い信頼を寄せている。年齢や職業ではなく、音楽でつながる人と人。感動です!

■私は昨年の母の日ライブの前日、ママ友のダンサー・野和田恵里花さんを亡くしました。友人の死を受けて舞台に上がる心情がどんなものなのか、少なからずわかっているつもりでしたけど、彼らはハンパじゃありません。本番前の一週間で二人もメンバーを失います。でも、誰も引き下がらない。歌うことが最大の追悼になると知っているからです。旅立った仲間に捧げる歌の力には、聴いている誰もが心を揺さぶられます。

■お互い「80歳までやる」と語っていた彼女に、この映画を見せてあげたかったなぁと思いました。バアさんになった二人が同じ舞台に立っていたら・・・そんなことを考えていたら涙が止まらなくなりました。とにかくハンカチお忘れなく。笑って、泣いて、そして元気になれる。「本気で生きる」ことを真正面から教えてくれる映画です。

ヤング@ハート 公式サイト→

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