財布を新しくしたら、今まで使っていたのがものすごく古びて見えた。 不思議だなあと思う。 新調した理由は使い勝手が悪かったからで、 古くなったと思ったことは一度もなかったのに。 何か新しいことに挑戦すると、 それまでの自分がとても小さな存在に思えるのと、どこか似ている。
今日は古めのアップライトを三時間ほど弾いた。 ほぼ完成した10曲分の楽譜を数日間、 色々な状態のピアノ(グランド/アップライト/電子ピアノ)で弾いて 音の滲み具合を調整している。 (水彩絵の具のように、音を滲ませた曲が多いので)。 勿論、ホールで弾くフルコンサートグランドがいちばん気持ちよいけど。 どんな状態のピアノを弾かせて頂けるかは、神のみぞ知る。 色々なことを楽器のせいにしたくないので、 最近は曲作りの際にこの方法を取っている。
家に戻ると実演家協会から「これはあなたが弾いているのか?」と確認要請のFAXが。 リストを見ると全てオリジナル作品、のはずなのに、 1曲どうしてもタイトルを見てもメロディが思い出せないものがあって大ショック 慌ててCDをかけて、ああこの曲か!と。 あまり気に入ってなかったのか、録音後も人前で弾いたことは、たぶん1度くらい・・。 いつの間にか頭の隅に追いやっていた。
でも、こうしてあらためて聴いてみると、けっこういい曲(笑)。 その曲は、「空ノ耳」に入っている「時ノ翼」。 まさにタイトル通り、時間を越えて自分に届いた旋律。 9年前の音の感覚が、ホールの空気と一緒に目の前に迫ってくる。 信州の平屋の木造ホールで弾くスタインウェイのフルコンは、気持がよかった。
今は子供の世話で腕力がついたせいもあって、もっと音が太い。 時と共に刻まれた’生きた’記録です。
基本的に自分の録音は、 制作段階(レコーディング&ミキシング&マスタリング)で一生分聴いてしまうこともあり、 発売後はほとんど聴かないです。反省で胃が痛くなることもあり・・。 こうして10年くらい熟成させると、いい感じで聴こえてくるというのは新しい発見。 2000年の秋、信州国際音楽村の木造平屋ホールでの2CH一発録音。 録音前の半年間は信州に通って、今は亡き祖母の家に泊まって最期の時を少し一緒に過ごした。
ちょうど祖父の生誕100年目、2001年の発売。 当時は’癒し系ブーム’で、すべてがそこで括られたことに反発を感じていたけれど。 自分としては邦楽の影響で’感情を抑えて型にはめて弾く’というスタイルに凝っていた頃。 昨年発売した「生きものの音」は全曲即興だから、まさに対極です。 聞き比べてみると面白いかも。 「空ノ耳」は今は思いがけず、NYから世界のあちこちに配信されています。
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