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2012年7月 6日 (金)

絵が歌いだすワンダーランド「コドモノクニへようこそ」

Kodomonokuni 多摩美術大学美術館で開催中の「コドモノクニへようこそ」展に行ってきました。

『コドモノクニ』は大正11年(1922)1月に創刊され、昭和19年3月までの23年間で287冊が刊行されました。対象は2歳から7歳の子どもと親。ビジュアルと文学、音楽性を併せ持つ革新的な雑誌でした。
私のCD『Mother Songs』にも、この雑誌から生まれた『あの町 この町』(大正14 野口雨情作詞 中山晋平作曲)を収録しています。

今回は主催が美大ということもあり、
武井武雄や初山滋を初めとするグラフィックの美しさが際立つ展示内容でしたが、
北原白秋の詩をはじめ、
当時の優れた芸術家たちが集結し、
子供たちに向けて本気でよい雑誌を作ろうという熱意、
アンチ文部省唱歌の気風、
また大正モダンから、昭和の帝国主義へ移りゆく時代の空気は、
十分に伝わってくる内容でした。

この雑誌が創刊されたのは大正11年。
新しいエネルギー’石油’や、地下鉄やビルが紹介され、
第一次世界大戦後、東京の近代化が加速していく様子が見て取れます。
東京(都市)の子供たちのライフスタイルやファッション、
ヨーロッパを意識した’モダン’な雰囲気の紙面づくりは、
今の情報(広告)過多な子ども雑誌とは一線を画した
精神的な自由や芸術性の高さを感じます。

しかし、その翌12年9月1日に関東大震災が起きるのです。
地震後三か月目に復刊された12月号には、
壊れた町を背景にテントで配られるおにぎりを頬張る
元気な子供たちのイラストが掲載されているのが印象的でした。

こうして自然災害は乗り越えることができた『コドモノクニ』でしたが、
戦争には勝てませんでした。
帝国主義の足音が忍び寄り、
戦時下の風潮にそぐわない雑誌は、戦況の悪化と比例するように経営が悪化し、
廃刊へと追い込まれていきます。

子どもたちが、ないがしろにされていく時代。
それは大人たちに余裕がなくなった不幸な時代です。
今の時代はどうでしょうか。
どこかこの時代と似た空気を感じてしまうのは私だけでは無いはずです。

『コドモノクニ』に描かれる戦前の東京の暮らしに、
もちろん原発の存在はありません。
けれども今より生活が劣っているとも、不便そうだとも思えない。
むしろ子どもたちは生き生きと、その笑顔は幸福に見えます。
100年前の暮らしの方が、精神的にもモダンだと感じるのは、
今日まで「便利な暮らし」のために払った犠牲の大きさを考えると何とも皮肉です。

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