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2014年10月14日 (火)

ヨコハマトリエンナーレ2014

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 8月1日のスタートから11月3日の閉幕まで、残すところ1ヶ月を切ったヨコハマトリエンナーレ2014に出かけました。日曜日ということもあって、国や時代を越えた国内外の美術作品が展示された港北ピア+横浜美術館の両会場は大勢の人で賑わっていました。展示内容の詳細については関連サイトをご覧頂ければと思いますが、「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」を掲げた2014アーティスティック・ディレクター/現代美術家の森村泰昌氏の言葉を、是非ご紹介したいと思います。

「人生のうっかりした忘れもの、人類の恒常的な忘れもの、現代という時代の特殊な忘れものを思い出すための、いわば「忘却めぐり」の旅である」

 忙しい日常に追われて忘れてしまった/忘れたふりをしている、気づかなかった/気づいたのに知らないふりをしている数々の「忘却の領域」。そこに反応した芸術表現や表現者たちの作品からは、特に2011年3月以降の、私たちを取り巻く社会の在り様にも、あらためて芸術作品を通して光を当てたのだと思います。思い出すために、あるいは忘れないために。胸がチクリと痛くなったり、また時にはどこか懐かしい気持ちになる展示の数々でした。
 午前中の港北ピア会場では「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」のヨコトリ鑑賞ツアーに参加しました。彼らのワークショップには既に何度か参加していますが、参加するごとにゆっくりと自分が「育って」いることに気づきます。初めて参加した時の「気疲れ」や「言葉疲れ」のようなものがなくなって、本当にリラックスした状態で、初対面の皆さんと一緒に鑑賞の時間を楽しみました。
Photoその、決して「押しつけ」ではない緩やかな意見のやり取りには、クリストファー・スモールが「ミュージッキング(音楽する)」を「社会の理想的なつながりを学ぶための活動」と捉えたような、フラットで理想的なコミュニティのかたちが内在していると思いました。みえる人とみえない人が、美術作品を媒体に、みえる/みえないモノやコトについてあれこれ語るシンプルな鑑賞方法は、芸術の役割とは何かを捉え直す時間ともなるのでした。
 例えば、写真2枚目で盲導犬モナミとみんなが見ているのは、青いゴム風船が積み重なったオブジェです。現実ではありえない風景ですが、この作品を違和感なく受け入れている自分に気づきます。それは日ごろ認識している現実の「曖昧さ」であるとも感じました。しかし中には、この作品に対して全く違う感想を持つ人もいる。その「自己と他者の感性の違い」を楽しむことが出来るのが、このワークショップの面白さでもあります。本来世界は、人の数だけ存在するのかもしれません。それはサウンドウォーク(音の散歩)で他者の「耳」を知る、世界の多様性を体験する時間と同じです。
 ワークショップを終えた午後の横浜美術館では、対照的に内省的なひとりの鑑賞時間を過ごしました。「第1話 沈黙とささやきに耳をかたむける」には、ケージの4分33秒の楽譜が展示されていて、まず「内側の沈黙に耳をすます」ことから始めました。
 そして何と言っても今回最も胸に響いたのは釜ヶ崎芸術大学 (写真上)の一連の作品です。「アール・ブリュット(生の芸術)」を「アウトサイダー・アート」と置き換えたりしますが、この展示はアウトサイダーではなく、この2014年ヨコトリの「中心」だと思いました。釜ヶ崎の「おっちゃん」たちの生の声、言葉そのものが、力強い存在感をもって「忘却の海」から迫ってくる。社会から忘れられ、「アウトサイダー」と見なされる人たちの世界に立てば、世界はあっという間に反転する。こちらがインサイドになる。目の前に広がる生き生きとした作品、その背景に垣間見える人と人とのつながりは、インサイドだと思っていた世界からは失われつつある。こちらの世界こそがアウトサイドなのだと思えてくる。そのインサイドとアウトサイドをつなぐ「生の芸術」としての言葉の海に圧倒されました。

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最後の写真は「牢屋」の作品の内側から写した写真です。この鉄格子ひとつで、フロアの親切な警備員さんが看守に見えてくる不思議。制服という人のアイデンティティを固定するものが、これほどの力を持っているのかとあらためて思いました。そして牢屋は内側に入ってみない限り、その内側にいる人の気持ちは決してわからないだろうということも、わかったのです。
世界の片隅にある、しかし力強い「生の声」に耳をすます。私の存在する、今あるこの世界を疑ってみる。そして他者の世界を知ろうとする。そこにつながりが生まれる。そのきっかけを与えてくれる芸術と出会い、発見する一日でした。

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