オノ・ヨーコ『どんぐり』
もともと『グレープフルーツ(ブック)』は、私が生まれた1964年に500部だけ自費出版された手作りの詩集。デザイナーの知人が「古本屋で面白い本を見つけた」とザラ紙に文字びっしりの小さな本を貸してくれたのが30年近く前。霧で帰りの飛行機が飛ばなくなった夜行列車の中だった。
その本が後の「イマジン」となり、過去を遡ればジョン・ケージにつながるという不思議。ニューヨークのグッゲンハイム美術館SOHOで、偶然展示されていた原稿用紙に鉛筆で書かれた子どものような文字原稿を見たとき、私もいつか500部だけ自費出版でCDを作ってみようと決意した。
それから最初の『青い花』まで結局10年近くかかり、そこから予想外の出会いが続き5枚のCDにつながり、いまは花という娘の母になっている。その間に『グレープフルーツ』は『グレープフルーツ・ジュース』となり世界中で出版され、『青い花』も地味ながら今もニューヨークから世界各地に配信されている。日本よりも先にあの街が声をかけてくれたのが面白い。
あの時、飛行機が無事に飛んでいたら出会わなかったかもしれない『グレープフルーツ』。50年ぶりに刊行されるオノ・ヨーコの詩集は、まさにあの本を踏襲しているという。M.シェーファーの『世界の調律』しかり、自分の生き方を内側から変えてしまうような一冊の本との出会いがある。「想像しなさい」と語りかけられた時、私は想像力こそが人間が人間である証なのだと知った。‘想定外’なんてあり得ない。あってはならないのである。
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