「こまば哲学」にて
11月には東京大学駒場祭で開催された「こまば哲学」に、コネクトの方で協力させて頂きました。プログラムは「対話は言葉だけのもの?~音楽療法やサウンドスケープの視点から」です。
ファシリテーターとして音楽療法士・三宅博子さんを中心に、即興演奏や音のワークショップ、主催のP4E/山村洋さんの言葉での対話を重ねながら、参加された皆さんと一緒に「音」や「きく」からさまざまな気づきを得る時間となりました。
この中で、弘前今田匡彦研究室でもおなじみのサウンド・エデュケーション「紙のワーク」を皆さんに体験して頂きました。そして今年、いくつかの場所でこのワークを実施してみて気づいたことがあります。紙のワークの「ルール」は「音を出さないで紙を回す」だけなのですが、そのルールをどう受け止めるかによって身体性が、もっと言えばその場の「音楽」が大きく変わってくるということです。
しかしそこにほんの少しだけ「関係性」や「柔らかく」というキーワードを与えるだけで、場が劇的に変化する。直線的に紙が回されていくだけだった場が、明らかに音楽的な波を描き始めるのです。皆さんの身体も膝や手首が上手に使われて、柔らかくなっていく。何より紙が美しく波を打ち、音楽を奏で始める。もしルールが破られたとしても、視覚的な「美」、また「全体の流れ」が包み込む。何より緊張感が消えて「楽しく」なるのです。
生活の中で「なぜ音楽が必要か」という問いの、ひとつの答えを見つける瞬間です。しかもこの場合は「沈黙をきく」というサウンドスケープ論の根幹にも迫ることができます。
さらに紙のワークには、コミュニティや紙の質を変えることからも気づきがあります。最後に「音を出さない」というルールを外したときに生まれる「自由な音楽」にも、また違う音楽の発見や喜びを感じることができる。実に単純にして奥深いサウンド・エデュケーションなのです。
『哲学音楽論~音楽教育とサウンドスケープ』今田匡彦著 恒星社厚生閣(2015)
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