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2016年12月31日 (土)

ピアノのこと

Piano_3

①今年いちばん印象に残ったピアノ。様々な事情から親と離れて暮らす障害のある子供たちの施設、その食堂の片隅にあった。今では珍しい象牙の鍵盤で、丁寧に時間を重ねた丸くて優しい音がした。ピアノの前にいくと高校生の男の子がやってきて、ベートーベン「悲愴」第2楽章の頭を弾いてくれた。「好きな曲?」ときくと、はにかみながら「うん」と頷いた。彼はとても耳がよく、記憶から旋律を紡いでいた。おそらく緊張で室内を走り回っていた背の高い男の子がいた。その子がある瞬間、ピアノの傍に静かに腰を降ろした。彼は床に体育座りをして空(くう)を見つめたまま、静かな横顔でこちらの音に耳を傾けていた。彼は「何を」きいていたのだろう?言語のやりとりは困難だったので、今も謎のままだ。もしかしたら魔法のピアノだったのかもしれない。子どもたちはみんな、このピアノが大好きだった。

Jike_2

②12月のミロコマチコ展で弾いたJIKE STUDIOのピアノ。アメリカ製(ワシントン)で100歳だった。響板にひびが入っているらしく、弾く場所によっては何とも面白いダミ声のような倍音が鳴った。低音は心地よい抜け感。会場中央に太陽のようなミロコさんとカプカプのトミさん、彼らの間を惑星のように自由に動く新井英夫さんと板さん、その周囲にはカプカプーズや会場のお客様たち。60名近いエネルギーが歌や踊りとなって渦巻く「宇宙の音楽」が内側から立ち現れた。時おり、誰かが飛び入りでやってきては即興の連弾になる。自分もそれを当たり前に受け入れていた。若い頃の自分ならどうしただろう?ひらかれたのは楽器か、音楽か、それとも心か。一期一会のサウンドスケープに、自分がいま求めているのは「関係性の音楽」だとあらためて実感した。(結局役に立たなかったけど、バックミラーを付けたのも初めてだった)。

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