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2017年3月の2件の投稿

2017年3月27日 (月)

『故郷』に想う

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先週、近くの小学校で卒業式がありました。最近はポップスから合唱曲まで様々な歌がうたわれているようですが、この小学校では体育館で『故郷』(高野辰之作詞、岡野貞一作曲)を歌う子どもたちの歌声が、校庭のスピーカーから流れてきたのです。
 その「歌」をたまたま耳にした途端、涙があふれました。
 『故郷』は2011年3月の福島原発事故以来、自分の中で特に演奏することを躊躇する曲でした。というか、音を出すことそのものから距離を置く生活をしていました。そうした中で、偶然こちらに避難する福島の方から『故郷』は「聴きたくない曲」だとお話を伺ったことがありました。辰野氏は自身の故郷である長野県の風景を描いたと言われていますが、普遍的な里山のイメージには、私たちが原発事故で失ってしまったもののすべてが詰まっている。音楽の力には人を勇気づけるものと、無意識に傷つけてしまうものがあることを、音を出す側は常に意識していないといけないと思ったエピソードです。
 一方でつながりもありました。ベルギーからメールが届いたのです。ドイツで開催された復興支援コンサートでたまたま『故郷』を知り、いろいろ探した中で私の編曲したピアノ・バージョンを弾いてみたい、楽譜を送ってほしいという内容でした(楽曲はすべて現在もN.YのTheOrchard社から世界各国に配信されています)。

 作曲家の岡野貞一氏はクリスチャンとして教会でオルガンを演奏していたこともあり、この楽曲にはやはり讃美歌に通じる響きを感じます。西洋音楽を学ぶための国策としてつくられた「文部省唱歌」ではありましたが、100年間歌い継がれた今は、この国を代表するスタンダードのひとつと言って良いのだと思います。
 実は演奏活動を休止した311後も、年に一度ホスピスでピアノを弾かせて頂いているのですが、車いすやベッドのまま楽器の周囲に集まった方たちから自然と歌の輪が生まれるのもこの『故郷』です。それまでは無反応だった方も何かに導かれるように歌を口ずさむ。その瞬間には間違いなく歌や音楽の力を感じずにはいられません。
 『故郷』にまつわる記憶にはダンサー・野和田恵理花さんのことも思い出します。この曲を収録した私のCDをきいてくれて、自身のプロジェクトでも「故郷」で踊ったことがあり「この曲が大好きだし、80歳まで踊りたい」と話してくれました。その二年後、彼女は突然の病で旅だってしまいましたが、今でもそのスピリットは次世代に受け継がれています。
 この5月には、またホスピスでピアノを弾かせて頂く予定です。早いもので9年目となりますが、実は『故郷』を弾くべきかまだ迷っています。文部省唱歌には忘れがたい美しい曲も多い。一方で歌詞が古く歌われなくなってしまった作品も多い。ピアノで旋律だけでも残していく、小さな音楽の100年のいのちを絶やさないことも大事な仕事であるとも思います。特に世代が変わっていく中で、音楽の成り立ちや歴史的な文脈、上から与えられた「文部省唱歌」を否定する流れも当然ある。それは自分の中にも全くないとは言えない。ホスピスの演奏曲を集めた『Mother Songs』を録音したのは311前でしたので、今あのCDを作ろうと思うかはわからない。国と音楽の関係性の歴史を考えたら複雑な心境ですが、しかし美しいと感じる旋律はやはり美しいのも事実です。
 それ以上に、小さな音楽の100年続いたいのちさえ奪ってしまう原発事故の深刻さを考えずにはいられません。もう6年、まだ6年。故郷を奪われた人たちにとって、まだ何ひとつ解決していないという現実からも目を逸らすわけにはいかないのです。

◎YoutubeにUPしているササマユウコの「故郷」です(CD『Mother Songs』収録)

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2017年3月26日 (日)

空耳図書館のはるやすみⅢ うららかに終了しました。

♪3月20日の春分の日。「空耳図書館のはるやすみⅢ」を開催しました。
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。活動の記録はこちらから ご覧いただけます。

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あそぶ人aotenjo (外山晴菜/ダンサー、振付家 橋本知久/音楽家)  
+空耳図書館ディレクター:ササマユウコ       イラスト:Koki Oguma

◎「空耳図書館」に関するお問合せは
芸術教育デザイン室CONNECT/コネクトまでお願いいたします。

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