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2018年8月の4件の投稿

2018年8月27日 (月)

即興とピアノ

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 2011年3月11日以降、個人的に(心理的に)音が出せない時期が数年続いて苦しみました。文字を覚える前からピアノを弾いてきたので、それまでの生き方すべてが問われているような途方に暮れる時間でした。いわゆる「絆」や癒し系コンサートをお断りしていたらすっかりピアノを弾く機会もなくなり、混乱した社会の中で「音」を出す意味もわからなくなっていました。代わりに弘前の今田研究室を拠点に、それまであまり重きを置いてこなかった「言葉」に出会います。同時に学会発表や学会誌掲載の機会がわりと早く頂けたので、とにかく「オンガクをする自分」を見失わないように必死に言葉を追いかけていました。生活のこともありましたし、自分はこのまま言葉の世界に行くんだろうな、、と思いながら研究室でも生涯学習を担当していた自治体の職場でも、目の前にある鍵盤に触れることさえしなかったと思います。それまでの活動を知る人たちの目には「音楽をやめた人」と映っていただろうと思います。

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 ただその’修行’の中でも家族のほかに、ホスピスやカプカプや児童養護施設等、日常の延長線上にあるピアノを弾く機会がありました。また不思議なことに、自分の言葉が深まり始めると、音楽に限らず芸術や学術に商業ベースとは違うかたちで向き合う人たちとの素敵な出会いや再会の機会が増えていきました。2015年の秋頃からは言葉の構築と共に音楽と自分の関係性が「修復」されていった時期だったと思いますし、今もその延長線上にあります。

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Dsc00714体奏家・新井英夫さんとのキクミミ研究会、そして12月にはアーツ千代田3331レジデンス・アーティストJan&Angela(スイス)との「音を奏でる身体~動く音響」のコラボレーターとして2011年以降自分の中で膠着していた何かが解き放たれたと思います。そして一昨年の秋には思いがけず『フリープレイ~人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』の著者S.ナハマノヴィッチ氏と訳者の若尾裕先生とご一緒する機会があり、即興ワークショップの現場では数年ぶりに「今、ピアノが弾きたい!」と心から思いましたし、おそらく2011年以降はじめて躊躇なく鍵盤の前に座ることが出来ました。またこの年の5月には映画『LISTEN リッスン』の共同監督牧原依里さん、雫境さんと出会い「音のない世界」聾者の世界にあるオンガクの存在を知り、『世界の調律~サウンドスケープとは何か』の最終章「沈黙」の本質に辿りついた気がしました。

 先日(17日)の「即興カフェ」では「ピアノを弾いてる時がやっぱりいちばん自分に嘘がない」と感じました。心は見事にまっさらな状態というか。特に「即興カフェ」はメンバーの鈴木モモ(ストリングラフィー)をはじめ、毎回のゲスト(等々力政彦さん、石川高さん、國崎晋さん、雫境さん、鎌田英嗣さんなど)のオンガク性に恵まれたこともあり、とにかく余計なことを考えずに即興に臨めるリアルで正直な世界でした。この感覚を大切にしたいと思いますし、参加者の皆さんとも共有しながら様々なサウンドスケープが編まれていくといいなと思っています。また20代から幅広い世代の人たちが音楽性の趣向に関係なく楽しめるオンガクの場となっていることも「即興カフェ」の特徴だと思っています。

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ピアノの演奏は指先の技術だけでなく、長時間弾いても疲れにくい身体の使い方(呼吸法や全身のバランス)、そして何より鍵盤の前で「耳をすます|ひらく」、精神をニュートラルに保つ意識が必要です。オンガクは時間だけでなく関係性の芸術でもある。ピアノと空間と自身の関係性を音の風景として編むような「サウンドスケープ」の意識を忘れずに、「即興カフェ」では共演者の皆さんとは一期一会の即興的な対話、非言語コミュニケーションを生み出していけたらと思います。
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「サウンドスケープの哲学から新しいオンガクのかたちを実験する」即興カフェ。
ジャズやクラシック、従来の音楽セオリーからも自由になった「音」そのものに向き合うような、サウンド・エデュケーション的な即興を実験しています。また音楽教育(ワークショップ、レクチャー)、インスタレーション(オンガクと美術の融合)もめざし、三つのプログラム(①実験②即興ワークショップ/講座③インスタレーション)から多角的に「即興とは何か」「オンガクとは何か」を皆さんと一緒に考え、感じて行ける場をこれからも作っていきたいと思います。
Fb_img_1516493611163 ご興味ある方は「芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト」内の「即興カフェ」までお気軽にお問合せください。またワークショップやインスタレーションの出張のご依頼もこちらで承ります。どうぞよろしくお願いいたします。
(音楽家/即興カフェ・プロデューサー/芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト代表 ササマユウコ|YukoSasama)
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※写真は主に2016年以降の『即興カフェ』の様子から。場所は音と言葉・HADEN BOOKS(南青山)、HalfMoon Hall(下北沢)、仙川・森のテラス(調布)、JIKE Studio(ミロコマチコ展withカプカプ)など。イラストはインドTARA BOOKSから絵本を出版されたKoki Ogumaさんです。

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杉並公会堂10年前の2008年頃でしょうか。即興ではなくMother Songsのプログラムを弾いています。

CD『MotherSongs』の某スタジオ録音風景(2009)

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2018年8月19日 (日)

「即興カフェVol.6 真夏の夜に|言葉のない対話」ご参加ありがとうございました。

 お盆明けの金曜日に、協働プロジェクト「聾/聴の境界をきく」 とのコラボ企画として開催した第6回「即興カフェ」を実施しました(下北沢HalfMoon Hallにて)。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

 写真ではいわゆる「パフォーマンス作品」に見えますが、前半では雫境さん(聾の舞踏家)、鈴木モモ(ストリングラフィ)、ササマユウコ(ピアノ)が音のある|ない世界を行き来しながら、特定の役割やシチュエーションを決めることなく、登場順だけを決めて50分間の即興的な「対話」を実験しています。音楽的なルールからは自由に、ただし音楽的意思をもった身体によるコミュニケーションです。後半は写真がありませんが、参加された皆さんを交えて、米内山陽子さん(劇作家)の手話通訳を通した言葉による対話の時間をシェアしました。即興カフェFacebookで前半の写真がアルバムになっていますので、よろしければ雰囲気だけでもご覧ください。後半の対話は、また後日レポートしたいと思います。
目と耳で楽しむ新しいオンガクのかたちの実験。今回は聾/聴、音楽/美術、言葉/非言語の境界、また小さなチームながら20代から50代が集まる世代間交流の場ともなり、さまざまな可能性が示唆される場となりました。ご参加いただいた皆さまからも客観的な視点をシェアすることができて、主催者側にとっても有意義な時間となりました。どうもありがとうございました!
即興カフェ・プロデューサー:ササマユウコ
  http://www.facebook.com/improcafe

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(C)即興カフェ2018
第6回「真夏の夜に|言葉のない対話」
実験した人:雫境(舞踏)
鈴木モモ(ストリングラフィ)
ササマユウコ(ピアノ)
前半 50分間の非言語即興セッションより
即興カフェFacebook よりアルバムがご覧いただけます。
●今回の考察を芸術教育デザイン室CONNECT/コネクトのブログ「コネクト通信8月号」に掲載しています。

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2018年8月16日 (木)

即興カフェ⑥『真夏の夜に|言葉のない対話』 明日開催です。

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「サウンドスケープの哲学から新しいオンガクのかたちを実験する音楽家のプロジェクト」即興カフェ。明日17日午後7時より第6回『即興カフェ 真夏の夜に|言葉のない対話』を開催いたします!

◎ご予約は本日まで。当日もあります。詳細はこちら→

 今回は二部構成。1月の即興カフェでは「音と言葉のある風景」をテーマに、あえて「言葉」にしばられることから表出するオンガクや即興を実験しました。
 今回は反対に、前半は言葉のない即興セッション(出演:雫境/舞踏、ストリングラフィ/鈴木モモ、ピアノ/ササマユウコ)を、後半では参加者を交えて「言葉」による対話をします(手話通訳:米内山陽子(劇作家)。「言葉のある|ない」、「音のある|ない」、さまざまな「境界」を行き来しながら、目と耳でオンガクの時間を旅します。協働プロジェクト「聾/聴の境界をきく」(助成:2017アートミーツケア学会青空委員会)とのコラボ企画としても捉えています。

 カナダの作曲家M.シェーファーが著書『世界の調律』(平凡社ライブラリー)の中で「サウンドスケープ論」を提唱したのは今から40年前。耳/音から世界を「音の風景」として捉え直す先駆的な考え方は、むしろ音楽専門領域に受け入れられるまでに時間を要しますが、この著書の最終章では「沈黙」が扱われています。ちょうど2011年から弘前大学今田匡彦研究室でサウンドスケープ研究をはじめて、「沈黙」に辿りついたところで、今回のゲストであり協働プロジェクトのメンバーである聾の舞踏家/雫境さんに文化庁メディア芸術祭の「聾者、視覚障害者の鑑賞ワークショップ」で出会いました。サウンドスケープに興味があるという雫境さんは、それから2年後の2016年に牧原依里さんとの共同監督で聾者の音楽映画『LISTEN リッスン』を発表します。その上映アフタートークに呼んで頂いたご縁で、2017年の協働プロジェクトにもつながりました。
 「これは音楽なのか?」という無音映画『LISNTE リッスン』の問いかけは、まさに衝撃でした。私は今までに数回この映画を観ていますが、彼等の世界にある「音のないオンガク」を感じています。そこには旋律やリズム、ハーモニーや歌など、さまざまな音楽の要素がある。音楽的意思をもつ身体の内側からは聴者/聾者に関わらず、サウンドスケープをデザインすることができるという確信のもとに、今回の実験にも挑んでみたいと思います。
 作曲家・水嶋一江さんが考案したストリングラフィは「音/音律」を糸電話の原理で視覚化した楽器とも言えます。水嶋さんアンサンブルの主要メンバーである鈴木モモのソロ・プロジェクトでは、糸は音律よりも空間インスタレーションとして張られ、「音響装置」として奏でています。その音は時に人の声のようでもあり、自然界の音風景のようでもあり、宇宙的な音響空間を編み出します。
 今回は、私の即興ピアノと彼女の糸の間には「音」が存在しますが、雫境さんはふたりの「奏でる身体」や空気そのものの共振を視覚だけでなく、皮膚感覚でも捉えているのではないかと思います(このあたりは後半の対話で伺ってみたいな)。
 もちろん出演者同志の身体や音の対話だけでなく、参加者の皆さん、楽器(モノ)や空間、そして時間との対話も要素として絡んでくると思います。「オンガク」とは何か。何が「オンガク」か?今回は耳と目で楽しんで頂ければ幸いです。

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即興カフェVol.6
「真夏の夜に|言葉のない対話」
18時40分会場 19時スタート
実験する人:雫境、鈴木モモ、ササマユウコ
手話通訳:米内山陽子
協力:松波春奈
ご予約2500 当日3000
@下北沢Half Moon Hall 

ご予約 improcafe.yoyaku@gmail.com 
http://www.facebook.com/improcafe/

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2018年8月 8日 (水)

協働実験プロジェクト「聾/聴の境界をきく」

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来週17日(金)の即興カフェは、昨年アートミーツケア学会青空委員会の公募プロジェクトとして助成をいただいた協働実験プロジェクト「聾/聴の境界をきく 」とのコラボ企画です。
後半の対話には協働メンバーでCODAの米内山陽子(劇作家)の手話通訳がつきます。また受付や会場には筆談用のホワイトボードを設置しますので、お気軽に足をお運びください。
FBカバー写真は映画『LISTEN リッスン』共同監督の牧原依里さんに撮影して頂きました。(C)2018 Deafbird Production

◎現在ご予約受付中。即興セッションと言葉による参加型対話の時間。
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8月17日(金)19時Start(開場18:40)

即興カフェVol.6
『真夏の夜に|言葉のない対話』

雫境×鈴木モモ×ササマユウコ
(舞踏×ストリングラフィ×ピアノ)

手話通訳:米内山陽子(劇作家)、協力:松波春奈
ご予約2500円 当日3000円@下北沢Half Moon Hall

ご予約 improcafe.yoyaku@gmail.com

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